人生に必要なもの、クロネコとキンモクセイ

人生に必要なもの、クロネコとキンモクセイ

涼元悠一

「クロネコとキンモクセイ」
そう答えた彼女の、得意そうな顔。
いつも空いてる喫茶店、いつもの窓際、二人席。
秋、そろそろ日が短くなってきた午後。生け垣に囲われた、昔の洋館を改装したらしい一軒家。お客はおあつらえ向きに、僕たち二人だけ。よく磨かれた木張りの床に、南向きの窓から日光がまだらに射している。
僕の質問はこうだった。
「人生に必要なものは?」
もっとちがう答えを期待していた。
でも、唇から転がりだしたふたつの言葉は、クロネコとキンモクセイ。
最初に会ったのはもう一年も前だ。
印象は、「見てると楽しい子だな」だった。
飾りっ気のない髪型とモノトーンな服装から想像したのと違って、中身はほわほわしてるというか、一風変わった感じだった。『電波系』とか『わざとっぽい』とか、露骨に嫌う奴もいた。僕が気にならなかったのは、初見ではそこまで入れ込まなかったからだ。
何度か会うと、見てるだけじゃ中身はわからないんだなと思った。
実用一点張りの真四角なポーチの中に、いつでも飴を入れている。でもそれがフランス製だかフィンランド製だかの不思議なデザインの包みで、ひとつもらってみると、まともに食べられないようなすごい味だった。吐き出しそうになったら、勿体ないから最後まで舐めて、と言われた。
「こういう味が好きなんだ」
「好きとかそういうのじゃないけど」
答えながら自分も一個口に放り込んで、まんざらでもなさそうな、幸せお裾分け的な顔をしていた。これじゃ褒め言葉に聞こえるか。でも、本当にそんな感じだった。
なんだかんだあって、付き合うことになった。
そこからまた色々あって、週末は僕の部屋で一緒に暮らすようになった。
機会を見て同僚だちに紹介すると、みんな口を揃えて「かわいい」「羨ましい」と言ってくれる。でもその何日か後、彼女の話題になった時、一通り褒めそやした後こんな風に付け加える。
「でも、いろいろ難しそうな子だよね」
僕には合わないだろうってことだ。わかっているし、これからも変わらないと思うし、変えたいとも、変わってほしいとも思わない。
つまり……自分で言うのも恥ずかしいけど、ベタ惚れしてる。一緒にいてしっくり来る。ケンカをしてもすぐに仲直りしたいと思える。だから一緒にいたい。できれば、できるだけ長く。
ついでにぶっちゃけると、あの時の僕は勢いでプロポーズ的なことを言い出すつもりだった。
日曜の昼間をいつも通りに一緒に過ごして、締めくくりに彼女お気に入りの喫茶店に入って、僕がブレンドコーヒーのホット、彼女が黒すぐりジャムのロシアンティーを注文した。一週間分貯まったとりとめのない話をたくさん聞いて、いい感じにくつろいだ雰囲気になって、向かいに座った彼女の横顔が、半分の月みたいに眩しく輝くのが妙に綺麗に映えて。
ずっとここに来れたらいいね、なんて話の流れになった。
こうなったらもう、行っとくしかないわけで。
「それじゃあさ、ひとつ質問なんだけど……」
僕は切り出した。
「人生に必要なものは?」
僕なりに考えて、僕なりに踏み込んで、気持ちを込めた言葉のつもりだった。
でも、彼女はまごつきもせず、ずばっと即答した。
クロネコとキンモクセイ。
もう一度言うけど、クロネコとキンモクセイ。
「なんで?」
「前にね、ものすごいお金持ちのヒトがいて」
いきなり雲行きが怪しい。そう思いつつ、僕は念のため確認する。
「仕事関係?」
「ううん、ぜんぜん別」
早く先が話したいんだろう、首をぶるぶる、即座に否定する。
「だって庭とか公園みたいに広いんだよ? 他にも家がたくさんあるって言ってたし。それでいろいろ興味津々で、でもどうしても聞いたことがあって」
「どんなこと?」
「『駄菓子屋買い占めとかもうしました?』」
三秒ぐらい、沈黙ができてしまったと思う。
「なるほど」
「なるほど、でしょ?」    
「それで、お金持ちさんの答えは?」
「『は?』って言われた。失礼だよね。『は?』って」
「だね」
僕も二度ほど『は?』と言い返しそうになってるけど、それは置いておく。
「昔読んだ本にね、金貨をお店のおばさんに渡して、お菓子全部買い占める女の子が出てきたの。そういうのにもうずーっと憧れてて」
「買い占めて、全部食べるの?」
「ううん。好きなだけ食べて、食べきれない分はみんなに配るの。あと、おみやげにしてもいいし」
言いながら、無造作にカップを持ち上げて、鈴みたいに振るいつもの癖。
「あ。もうない」
「もう一杯頼む?」
「うん。次はウィンナティー飲まないとダメだから」
「こっちは別のでいいんだよね?」
「お好きにどうぞ-」
にっこりと笑って、その笑顔のままカウンターの方に「すみませーん」と呼びかける。
彼女がウィンナティー、僕は……結局ブレンドコーヒーホットのお代わり。オーダーを伝えるのもそこそこに、またこっちに向き直る。
「それでね」
幼少の頃からの夢であった『駄菓子屋買い占め』について、彼女は果敢に説明を試みたらしい。でも、当然理解してもらえるはずもなく。
「なんかね、いつの間にかワインの話になっちゃった。でも、全然美味しいとかじゃなくて。何ダース買っていくらだったとか、ずーっと持ってるどーにか言うワインが今は何十万円になってるとか。わたしにも一本くれるって言ったんだよ」
「ほんとに?」
「うん。だから言っちゃった」
「なんて?」
「ワインってやですよね。こぼすと落ちないし」
鼻白んだお金持ちの顔が見えるようだ。これだから電波系って言われちゃうんだろうな。あと、完全にとばっちりの高級ワインには同情する。
「素直にもらってきたらよかったのに」
ちなみに言うと、彼女はワインも大好きで、二人で一本空けることもある。僕がいなくても一本は簡単に空くと思う。
「だって、ワインの値段とか名前とか飲みたいんじゃないもん」
子どもみたいに口をとがらせたまま、言ってることは妙に鋭い。
「あー、やっぱりナントカタカイワインよりも駄菓子屋買い占めがいいなー」
「今度やってみる? さすがに買い占めはできないけど……」
「お金持ちじゃないから、禁止」
「禁止なんだ。それは厳しい」
「お金持ちキライだから」
空のカップをまた持ち上げてしまってから、すぐに戻してぶすっと言う。お金持ち大好きと言われるよりはマシだけど。
彼女にとっての幸せの中心は、いわゆる裕福ってやつじゃない。このまま二人でふわふわしたまま暮らしていけそうな気がするし、そうしたいけれど、できるものなんだろうか?
それを確認するために、「人生に必要なものは?」なんて言ったんだろうな。
つらつら考えていると、彼女がふうっと溜息をついたのが聞こえた。
「お金持ちって、いつもなにをしてるのかな? せっかくお金あるのに」
「そりゃまあ、ゴルフとか」
「ゴルフをしたかったからお金持ちになったのかな? お金持ちになったからゴルフをしたくなったのかな?」
「ニワトリが先かタマゴが先かだよね。それは」
「どっちが先?」
「いや、そう訊かれても……」
僕に答えられるわけがない。未だに正解が得られていない、人類永遠の難問だ。
「要するに、お金持ちになることは人生において必要じゃない、と」
「うんそれ、だいたいそんな感じ」
僕は無難にまとめ、彼女は鷹揚にうなずく。
「だから、クロネコとキンモクセイ」
そしてようやく、会話は元の場所に戻ってきた、んだろうか?
「お金持ちになっても、温室とかでキンモクセイ育ててっていうのは違うから」
「うん。だろうね」
「今日みたいな日にね、よく晴れてて、ぶらぶら散歩してて、ちょっと寒くなってきたなって感じで、あれ? って思ってくんくん匂いかいだらそこにあるのがキンモクセイ」
木そのものだけじゃなくて、周りのシチュエーションもひっくるめてのキンモクセイってことだろう。きっと。
「キンモクセイ好きだったんだ」
「ううん、そんなに」
ぷるぷると首を振る。僕は困ってしまう。人生に必要なものは? そう訊いたはずなんだけどなあ。
「あ、ちがうちがう。キンモクセイだけじゃダメってこと」
「じゃあ、やっぱりクロネコも?」
「うん、クロネコも。でも、それだけじゃダメ。仔猫の時にある日突然迷い込んで来ないと」
また条件が厳しくなった。
「色が黒ってとこも譲れない?」
「うん。ゆずれない」
「そりゃまたなぜ?」
「なぜでも」
「そこを何とか説明をお願いしたい」
「うーん、敢えて言うならー」
しばし考えてる顔を見せ、それからあっけらかんと答える。
「クロネコって、それだけだとネコって感じがしないから」
「うーん、そんなもん? 個人的には猫オブ猫って感じがするけど、黒猫」
「うんうん、そんなもん。あんまりネコネコしてるのは好きじゃないんだ、きっと」
……まあ、そこは今拘るべきところじゃない。話を戻そう。
「僭越ながら、ここまでの流れをまとめさせてもらうと」
「まとめてみて」
「最初からそこにあったみたいなキンモクセイと、それにぴったりなクロネコがセットで必要であると」
「うん」
無邪気かつ簡潔にこくり。今度は僕がはあっと溜息。
「幸せになるのは難しいなあ……」
「そんなことないよ」
ほんわりと笑って、カウンターの方を向く。
「マスター、窓開けていいですか?」
薬缶が湯気を立てはじめた音と一緒に、どうぞ、という声が聞こえてきた。
彼女は自分の家みたいに、真鍮製らしい古い締め具を外して、窓枠に手をかけて……
「……開かない」
「僕がやるから」
椅子から腰を浮かして、いっぱいに手を伸ばして、彼女の隣の窓を押してみた。
たしかにちょっと立て付けが悪く、不満を言うみたいに蝶番がぎいっと鳴る。
「そーっとね、音を立てちゃダメ」
「……努力はします」
よくわからないけれど、慎重に、少しずつ、古い窓を外側に開いていった。
ひんやりとした風が入ってきた。
それから、空気にお酒を溶かしたような、とろけるような甘い香り。
「……あれ?」
「やっとわかったんだ」
そうしてひょいっと窓の外を指さす。生け垣の奥に、子供の背丈ぐらいのこんもりとした木が植わっている。小さなオレンジ色の花が、あとからまぶしたみたいにそこここに咲いていた。
僕が今まで存在にさえ気づかなかった、正真正銘キンモクセイの木だった。
「それと、あっち」
指をひょいっと下に動かす。
地面の日だまりにクロネコもいた。まだちっちゃい仔猫だ。キンモクセイの香りに包まれて、毛糸で編んだもこもこのクッションみたいに丸まって眠っている。
「ほらね、簡単。気づかなかった?」
いつもの澄まし顔で、でも得意そうに言う。
「うん、気づかなかった」
これには僕も、素直に感服するしかなかった。
「あそこのキンモクセイ、先週咲いてなかったよね。匂いも今日がはじめてだった。だから、今年はじめてのキンモクセイ。あと、クロネコもキンモクセイはじめてでちょっとびっくりしてたけど、今はお気に入り。だから、今年はじめてのクロネコとキンモクセイ」
クロネコの気持ちまで丁寧に説明してくれる。例によって根拠は特になさげだけど、たぶんそれで合ってる気がする。
それはそれとして、重大なことに気づいた。
「もしかしてだけど……今話してたのって、わりと見たまんまの即興?」
「どうかな?」
お待たせしました、と言って、マスターがお代わりを持ってきてくれた。
僕の前にブレンドコーヒー二杯目。彼女の前にはご所望通りのウィンナティー。こんもりとした生クリームの上、シナモンパウダーがたっぷりかかっている。シナモンたっぷりで!なんてオーダーしなくても、最初からこうしてくれるようになって、もう半年は経っている。
愛おしそうにカップを持ち上げ、クリームの山にそっと唇をつける。
「人生に必要なものとか、たくさんありすぎてわからないけど」
シナモンまぶしの生クリームを唇の端にくっつけて、彼女はこっちをまっすぐに見つめる。
「クロネコとキンモクセイだけは絶対必要」
それはきっと、ずっと変わらない宇宙の法則だった。

  


おわり

三十ウン年越しの聖地巡礼


2024年、秋のとある吉日、午前10時頃、南部駅前に降り立った。

南部駅前

本来なら五月末に訪れる予定だったのが、色々あって今日になってしまった。
ほどよく日が射し、ほどよくいい天気。とりあえず、駅前をぶらぶらと歩く。よさげな飲み屋もあればコンビニも喫茶店もある、コンパクトで住みやすそうな町。


海岸沿いに出る。広い砂浜、波打ち際では女子高生と思しきグループが戯れ、道の脇では曼珠沙華が咲いている。

南部駅前道路看板 左白浜右和歌山

南部駅近くの砂浜

南部駅近くの道沿いに咲く曼珠沙華

曼珠沙華のアップ

全く知らない土地の情景に触れ、久しく忘れていた旅情がいよいよ高まるのを感じる。そう、今回の目的地はここではなく、この町のすぐ隣にこそある……

つつがなく時間を潰し、そして時が来た。   

南部駅脇のパン屋さんベーカリーイングランド前景

駅前のパン屋さんで昼食用のパンを買い、ホームに戻る。

南部駅ホームに着いた普通御坊行き

ほどなく列車が来た。二両編成のワンマン車。もちろん鈍行、鈍行でなければならない。
最前のドアから乗り、整理券を取ってベンチシートに座る。

そう、この旅本来の目的地。それは──

 岩代駅ホーム

岩代駅ホームの駅名標

『紀勢本線各駅停車南部の次の岩代駅』、である。

岩代駅のホーム 木のベンチが二つ並んでいる

自分ひとりが電車を降りると、そこでは『人気のないホームの古いベンチ』が待っていた。
ぶっちゃけそこまで古くはないけれど、いきなりテンションが上がる。無人駅になったことは知っていたので、最悪、ホーム上の設備は撤去されていることも覚悟していた。

南部駅前で買ったパン三種。メイプルメロンパン、マヨコーン、唐揚げパン。

まずはベンチに座り、買っておいたパンを食べて腹ごしらえする。(ちなみにこの3個で確か370円税込。物価がバグってるにも程がある。そして美味しい)


人心地ついた後、ここに来たからには当然やらなければならない行為を実行する。
おもむろにイヤフォンを装着し、スマートフォンに入っているとある曲を再生した。

スマートフォンの音楽再生画面 テングサの歌/谷山浩子

……わけがわからないよという方も多いと思うので、遅蒔きながら説明を。

テングサの歌、シンガーソングライター谷山浩子が作詞作曲した歌唱曲。
自分がはじめて聴いたのは、たぶんラジオ番組、『谷山浩子のニャンニャンしてね』か『谷山浩子のオールナイトニッポン』の番組内だったと思う。つまり1984年前後。
かわいい曲調に反したちょっとファンタジックというか、ぶっちゃけて言えばグロテスクな歌詞は、一聴して深く印象に残った。その冒頭はこんな風に始まる。

『紀勢本線 各駅停車 南部の次の岩代駅の
ひと気のないホームの古いベンチの上にあたしはいるの』

それからずっと、岩代駅に行ってみたい。しかも南部駅から各駅停車に乗って行きたい。そして無人のホームのベンチに座ってフワフワしてみたいと思っていた。

三十有余年の時を経て、ようやく念願を叶えることができた。


3ループ聴いた後、とりあえず満足した。
それからホームと駅舎、駅前をひたすら撮影した。(途中下車扱いなので改札内外を行き来し放題。(まあ無人駅だから切符がなくてもフツーに入りたい放題ではあるけれど)

JR岩代駅舎を正面口から

年季は入っているものの最低限の手入れはされているコンパクトな駅舎。

岩代駅舎の前の小さなお稲荷さんの鳥居

脇にあったお稲荷様の祠で、無事ここにたどり着けたことを感謝した。

蔦に埋もれた岩代駅の駅名標と朽ちたビニールハウス

そしてホームに戻り、蔦に囲まれた駅名標を念入りに撮影。

蔦の中に立つ岩代駅の錆びた駅名標

そこには確かに、人間の手を離れ自然に帰ろうとしている人工物の儚さと美しさがあった。
(※すみません、色合いとかそれっぽく後加工しました)

これでやるべきことはやった。が、帰りの電車が来るまではあと1時間ある。
駅周辺を散策することもできたが、敢えてベンチに戻る。
そう、むしろここからが今回の核心だ。
このベンチに座ったからには、『何万年でも何億年でもずっとこうしてぼんやり』するのが筋だからだ。

そんなわけで、誰もいないホームで全力でぼんやりする。
何もなさすぎて退屈するかと思ったらさにあらず。『汽車の時間に汽車が来ない』『道は見えるが車は通らず』どころか、ちょっと離れた道路では、わりとフツーに車が行き交っている。そしてわりと頻繁に汽車(電車だけど)も来る。汽車の時間に正確に来ては数秒で通り過ぎていく。

岩代駅を通過する特急くろしお前面(287系)

岩代駅を通過する特急くろしお前面(283系オーシャンアロー)

岩代駅を通過する特急くろしお後面(287系)

それでも、時々は静寂が訪れる。
気がつけば、口笛を吹いていた。
扉、日だまりの少女、カントリーガール、夕焼けリンゴ……
今、この瞬間に流れるべき曲たちが、自然と口をついて流れる。
はじめて谷山浩子を知って数十年が経っている。あれから様々なアーティストの、たくさんの曲に触れてきたけれど、自分の奥底に根付いているものはそう簡単には色褪せないことを再認識できた。

正午を回った頃、少し風が強くなり、空気に秋らしい気配が混じりはじめた。
綺麗に清掃されたトイレに寄って、手早く帰り支度をした。  
数分後、定刻通りに普通御坊行きが来た。
電車に乗る前にもう一度振り返った。

岩代駅の木のベンチひとつ

そして、思った。
あのベンチには今も、十代の頃の自分が座っている。
今の自分は電車を乗り継いで、夜の街で一杯ひかっけて、きっといい気分で家に帰って、この旅行の一部始終をそれっぽくまとめてブログに載せ、いい思い出にするのだろう。
そうしてきっと……あのベンチに戻ることは、もうないのだろう、と。

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その後&余談。

車窓で気になったものなど。

きのくに線車両内からの車窓。海と青空。 
車両の窓が広い上にベンチシートなので、所によっては向こうに海しか見えず、千と千尋の神隠し気分が味わえた。

きのくに線車両内からの車窓。海沿いに曲がっていく。

岩代駅前後は線路がちょうど海沿いで、まさに紀伊半島に添って走ってる感が強くてよかった。

きのくに線車両内からの車窓。石油プラントのタンク類。

初島駅近くの石油プラント。山合いの風景をぼーっと眺めていたらいきなり来たので度肝を抜かれた。後で調べたら、『2023年10月をもって石油精製機能を停止しました』とのこと。

無事新大阪まで戻り、いつもの店で聖地巡礼の成功祝い。(予定調和)

新大阪のいつもの居酒屋のカウンター。越の鷹 純米イエローホークの一升瓶とグラス。 
越の鷹 純米イエローホーク。ぎゅっとした、でもやさしいお味。

新大阪のいつもの居酒屋のカウンター。俎皿の上の刺身。

お造り盛り合わせ抜粋。鯖きずし、鮪脳天、そして抜群に美味かった鰤、見えない端に鯛。

新大阪のいつもの居酒屋のカウンター。小瓶のスパークリングワインとフルートグラス、小椀の中にいちじくのコンポートとバニラアイスクリーム、スプーン。

デザートにいちじくのコンポートとバニラアイスをいつものたこシャン(スパークリングワイン)で。

親方に本日旅行の旨を得意げに話す。音楽の嗜好も違うし、当然通じるわけはないんだけど、「それ、駅前でテングサは売ってませんの?」と合わせてくれたのは嬉しかった。うん、たしかにそれはそう。俺なら絶対買ってベンチに置いて写真撮るし。生の天草が難しいなら寒天でも可。

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総括。
長年の宿願すぎたせいで、逆に今更行っても義務として喜ぶだけになっちゃうだけなんじゃないかなあ……正直そう思ってもいたけれど、実際には自分でも意外なほど嬉しかったし、興奮したし、達成した充足感もスゴかった。
やりたいことはいつやっても価値がある。
改めてそう気づけたのが、いちばんの収穫だったのかもしれない。
あと、谷山浩子の楽曲は絶望的に旅行中に合わないのを知ったことも。



註01:帰りの列車内では谷山浩子ではなく鈴木祥子を聴いてたのはここだけのヒミツ。だって浩子さんの曲、暗くした部屋で独りで聴くなら最高だけど旅情はほぼ皆無なんだもん。

註02:この記事本文中ではどういう趣旨の歌詞なのかは敢えてボカし目にしたので、ちょっとでも気になる方はぜひぜひ原曲『テングサの歌』御一聴を。

 

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蛇足。
いい感じの酔い加減で自宅に帰り着いた後、改めて腹ごしらえをした。

自宅、箱膳の蓋を盆にしてカップ麺(青春という名のラーメン 胸さわぎでかミート)と箸を乗せている。

カップラーメン(青春という名のラーメン 胸さわぎでかミート)の麺と具のアップ。

復刻成った青春という名のラーメン、これもまた、自分にとってはまさに青春の味。記憶の中では麺もかやくももっとチープだったけれど、美味しくて驚いた。そしてめっちゃ味が濃い。それはきっと、自分側の変化も大きいのだろうけど。ヒント:加齢)

令和4年9月末、実家帰省で台風断水



令和4年9月末、遅い実家帰省をしたら台風15号による静岡県静岡市清水区の大規模断水にまんまと巻き込まれたっていうか身内がまだ巻き込まれ中なので、その記録を自分用備忘録として取り急ぎまとめてみた。 

■基本情報 

【涼元実家】 
場所:静岡県静岡市清水区の入江地区 
具体的に言うと、さくらももこさんの清水時代の実家の商店街の菓子屋でみつやじゃない方(現在は廃業)。今回氾濫した巴川の南側で、ちょっと小高い側なので浸水被害はなし。 
2022年09月27日現在、断水はモロに食らい中。 
9月29日に涼元家においては水道が復旧しました。ご心配をおかけしました。

 
■以下時系列順 

●9月23日(金) 
昼間は親戚宅にお邪魔したり墓参りに行ったりした。 
夕方前に少しだけ強く雨が降ったが台風接近という感じはない。 
「たぶん今夜強く降って明日午後には晴れますよ」などと呑気な会話をしていた。 

夜、いよいよ降り始める。 
雨雲のためにBSが受信できなくなり、雨音がどんどん大きくなる。 
日付が変わる頃から雨勢が猛烈になり、雨漏りポイント複数から下の水受けに溜まり始める。 このあたりは家が古いので想定内。 
「うめひじきーうめひじきー」と緊急速報が相次いで二発届く。警戒レベル4、最初は巴川氾濫の恐れ、そして興津川。ウチは大丈夫だけど、巴川に近い方はキツいな、大丈夫かなと思う。
その後就寝するも、午前1時から3時ぐらいにかけて、まさに滝のような雨。時折雷もビカビカ光っているが、雷鳴が雨音にかき消されている状態。 
庭に溜まった雨水が土間に入らなきゃいいけどと思いつつ、そのままフツーに眠りに落ちる。

●9月24日(土) 
起きたら雨は止み、陽が射していた。 
遅い朝食を摂り(この時点では普通に水が出ていた)、雨漏りの具合を確かめた。 
いつもの雨漏りポイント以外にも増築前の古い部屋に若干雨漏りがあり、「ここが漏るのはマズいからひどくなるようなら屋根修理だね」などと話す。 

昼前ぐらいに広報しずおか(防災無線)の放送が聞こえた。 
「現在一部地域で断水や濁水があります。ご不便をおかけしますが復旧まで今しばらくお待ちください」 
こんな感じの内容。 
「大変な所もあるんだなあ」などと思いつつ、かねてからの懸案だった婦人車のタイヤ交換をしようと準備していたところ、姉が衝撃的事実を発見した。 
「水が出ない!」 
いやいやさっきまで普通にご飯と味噌汁作ってたじゃん、と思いつつも、蛇口を回しても確かにチョロチョロとしか出ないっていうかすぐに水が止まってうんともすんとも言わなくなった。 

twitterで情報確認すると、ものの30分ほどで、『コンビニやスーパーでミネラルウォーターが売り切れ』というのが流れ始める。目端が利く人たちとは対照的に、夕方ぐらいには直るかなと考えている涼元家。 

今は行列するだろうけど、給水車で水をもらうなら容器がいるだろうと探す。折り悪く焼酎用ペットボトルをほとんど捨てていたものの、5リットルのポリタンクが三つ発見された。しかもいつ入れたかわからない水入り。このファインプレーに沸き立つ涼元家。もちろん飲めないけれど、今はむしろトイレや手洗い用の水が欲しい。 
その後何度か蛇口を確認するも、出ないものはしょうがないので、とりあえず買い物へ。 

台風一過で夏のような日差しの中、清水銀座から巴川沿いの様子を確認する。 
稚児橋辺りの両岸は道が泥だらけで通行止め、巴川製紙の向かい側あたりが特に酷い。さらにてんさださんあたりにも水が流れ込んだらしく、泥のついた畳や家具が路肩に積まれている。自分はほとんど覚えていないけれど、七夕豪雨の時にあったはずの風景がそのまま目の前にある。

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スーパーに寄ると、トイレが使用禁止になっていた。情報通り2Lの水やお茶は全滅。500mlのウーロン茶は数本残っていたので1本と、さらにペットボトルの炭酸水を買う酒飲み一族の習性。この時点でなぜウーロン茶を買い占めておかない?<涼元家。水がなければお酒を飲めばいいじゃない。(※実際にやると死にます) 

夕方に防災無線が流れる。内容は昼と全く同じ。自分が知る限り、放送は27日朝に至るまでこの二度だけだった。まさに宝の持ち腐れ。 
そして日没。この時点で今日中の復旧はないだろうと覚悟する。実際は今日中どころではなかったわけだけど、水が出ないことの重大さがまだ実感できていない。 

晩に酒を飲むことも献立も昨日から決まっていたので、水はなくとも断固晩酌。 
いちじく生ハム、袋のまま電子レンジで温めたきのこ、バターコーンなど。とりあえず割り箸に紙コップ、いつもの皿にラップを被せてから盛り付けたり、豆腐の空パックを取皿にしてはみた。ちなみにビールからスパークリングワインに替えたら、見た目が健康診断(婉曲表現)になったので写真掲載は自粛。 

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静鉄が止まっていると知り、事の重大さを実感する標準的な清水っ子。 
電気とガスは平常通り使えるのは本当にありがたい。 
片付け時に当然水は出ず、皿は貯めてあった水に漬けっぱなしに。少量の水で手を洗うだけ。風呂も入れない。 
トイレは風呂の残り湯をバケツで汲んで流すが、なかなか上手く流れてくれない。これが心情的にかなりキツく、テンションが下がる。 

寝る前にはtwitterで情報を漁る。予想したとおり、給水車は出ているものの時間通りに到着しなかったりで大変だったらしい。水をもらうのに炎天下で行列して熱中症になったりコロナをもらったりしたら本末転倒なので、給水車を頼るのは最後にしようと決める。 

それにしても行政の動きが未だによくわからない。興津川の取水口が詰まったとは聞くものの、具体的な情報はどこかの議員さんがtwitterで流してくれた写真1枚のみ。最低でも1週間はかかるとか、2~3週間はダメかもしれないとか、悲観的な予測がちらほら目につくものの、みな「知り合いから聞いた」とか「震災の経験からして」などの枕詞がついている。権威のある当事者のソース付きの情報が切実に欲しい。 

それでも結局頼りになるのは、自力で選り分けるtwitterからの情報。近所の公民館で井戸水を配っている、ただし飲料不可とのこと。明日朝早速行こうと決め、なんだか不安な気持ちのまま就寝。ちなみに飲料水はもう一滴もない。麦茶ほんの少しとさっき買ったウーロン茶(500ml)のみ。炭酸水ならたくさんある。あと酒。 

●9月25日(日) 
9時過ぎ、公民館に井戸水をもらいに行った。 
5分弱並んですぐに順番が来た。主力装備の5Lポリタンク3つとザックに詰めたキャンプ用ポリタンやら小学校以来愛用している水筒やらまで満杯にして帰宅。これで一応生活用水の目処はついたものの、長引けば穴場の井戸水も行列することになるかもしれない。 

完全に水のない朝食。 
冷凍ご飯電子レンジ戻し、ほていの焼き鳥缶、缶入りすっぽんスープ。 
キャンプごっこみたいだと思いつつもそれなりに美味しく食する。洗い物の水はさっき確保したので多少は気が楽になった。が、依然飲水がない。一滴もない。取水場にの浄水場にも給水場にもスーパーにもコンビニにもない。 

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ここで安易かつ最後の手段を行使。 
すなわち、近隣の親戚に電話。 
ニュースで状況は知っており、「困ってるら? 今水汲んで持ってくよ」と二つ返事で引き受けてくれる。ちなみにフツーに水は出ているとのこと。葵区、直線距離で6キロしか離れていないところ。なんか釈然としないが仕方ない。 

飲み水が届く間に、効率的な水の利用を考える。 
必要なのは1飲み水、2手洗いや食器洗い用の水、3トイレを流す水の三種類。 
1はしばらくは親戚に頼り、週明けにスーパーの在庫が復活すれば買える、と思う。 
2、3は井戸水がもらえるので何とかなるが、自力で運ばなければならない。腰。 

3は当座風呂の残り湯を使って足りなくなったら井戸水を足すとして、地味に問題となったのは2を貯めておく場所。鍋やら薬缶やらを総動員してもまだ心許ない。 
そこで、大昔に使っていた羽釜を引っ張り出す。宇宙人に攻められて現有戦力が全滅したので第二次世界大戦中の戦艦が出撃するような熱い展開に、頭の中でThunderstruckが鳴り響く。ちなみに使い勝手が大変悪いため結局蓋だけ使用した。残当。 

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そしてtwitterでの情報収集。人の不幸をダシに政権批判を繰り広げているのを華麗にスルーし、近所で風呂やシャワーを開放している施設や、草薙の方の公園では水が出る!などのありがたい情報をゲット。そして衝撃情報が。なんと、のり面が崩れて静鉄が止まっているとのこと。これはもう尋常じゃない事態が起こっていると一瞬で悟る訓練された清水っ子。しかもまさかの桜橋-狐ケ崎間。えええっ、新清水-桜橋間じゃなくて!? でも該当区間は代行バスが出ていてピストン輸送敢行中とのこと。強いぞ静鉄僕らの仲間。 

そうこうしているうちに救世主こと親戚おじさんがトールワゴンの中からポワっと登場。おびただしい数の焼酎ペットボトルに水道水を入れてきてくれた。ていうかあんた普段からどんだけ焼酎飲んどんねんと思いつつも感謝感激。「足りなかったらまた持ってくるわ」の頼れる一言を残し、颯爽と帰っていった。 
これにより当座飲料水の心配もなくなった。むしろ多すぎて悪くなるまでに使い切れない気が。 
そしてさらに朗報来る。昨日の公民館よりさらに近所で井戸水をわけてくれるとのこと。こちらなら何往復かもできる距離。大変にありがたい。 

その後、気晴らしの散歩兼買い物。 
静鉄が変則運用していると知り、入江岡と桜橋間の渡り線を撮影。ここが使われるのは津波警報の時以来じゃないだろうか。非常にレアな光景に、撮り鉄と思しきお兄さん方も数人土手からカメラを向けている。 そしてJRの貨物列車にカブられている。

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その後いつものスーパーを確認、もちろん飲料水はない。魚の切り身とか生肉とか、調理が面倒なものが割引され、惣菜やパンなどのそのまま食べられるものが品薄。セブンイレブンも確かめたがもちろん棚がスカスカ。入り口で「○○のスポーツジムで風呂が入れるらしい」と携帯電話で話している人がいた。 

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帰宅し、飲料水のメドが立ったので祝い飲み。元々ソーセージとビールでオクトーバーフェストっぽく飲もうと決めていたのが、皿を昔使っていた菓子売り用容器にしたらさらにお祭りっぽくなった。静岡麦酒やら御殿場高原ビールのピルス、ヴァイツェンやらをとっかえひっかえ楽しみ、水を節約しいしいグラスを洗う。 

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ニュースで清水の断水情報を流すか流さないかで一喜一憂しつつ、明日は近所の井戸水をもらいに行こうと話す。事ここに至っても行政からの直接情報は乏しい。水道局の給水所情報が少しだけ充実したのと、夜のニュースで静岡市長と静岡県知事の存在が確認されたぐらい。ていうか、防災無線をもっと使おうよ。ニュースとかtwitterとか見て文句言ってるのはまだマシな層で、実際に困っている人には情報が届いていないことを危惧せざるをえない。 

寝る前に洗面器一杯ほど湯を沸かし、手ぬぐいを浸けて絞って体を拭いた。これが予想外に気持ちよくて落ち着く。トイレの流水の件と同じで、不潔でいることそのものが精神を消耗するのが実感できた。 

●9月26日(月) 
朝、近場に井戸水を貰いに行く。 
何人かが給水していたけれどほとんど並ばず。本当にありがたい。 

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浴槽に水を貯め、朝食。 
皿が洗えるのでかなりマシになってきた。それでもゴミの収集が追いついておらず歩道に放置されたりしているので、燃えるゴミはできるだけコンパクトにして袋に入れて冷凍しておくことにする。 

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トイレの水も相変わらず止まっているものの、水をケチる必要はなくなったため、バケツ一杯分で一気に流すコツがわかってきた。何度かに一度は便器上のタンクに水を入れて普通に流すこともできる。 

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ビスケットなどをつまんで昼食とし、『静岡市洪水ひなん地図』を広げて被害を復習する。やっぱりここは今回もやられちゃったのか……と思う土地が多い反面、意外なところが低かったり、巴川だけでなく大沢川や草薙川もフツーに溢れる予想がされ、実際に溢れているらしいことを知り、普段の認識の甘さを痛感する。少なくとも、こんなのを配ってる土地に住んでて「行政は何もしてくれない!」はさすがに虫が良すぎると思う。リメンバー七夕豪雨。 

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それはそれとして、断水が始まってから腹が減るのが異様に早い。普段やりなれてない作業をしているのもあるけれど、たぶん本能が「食える時に食っとけ!」と警報を出しているのだと思う。人間上手くできてるなあと思うものの、ちょっと空腹センサー感度が高すぎるとも思う。食べると当然出さなければならないわけで、そっちが億劫になってるせいもあるけど。 

午後遅めに井戸水を貰いに行く。(2度目) 
今度は効率のいい運び方を考えた結果、スーツケースに5Lポリタン2個、1個をデイパックに入れて背負うのを試す。悪くはないけれど、やっぱりそれなりに重労働ではある。真夏や真冬でなくてよかった。 
給水ポイントに来る人たちは、水の入れ物をそれぞれ工夫している。18Lのポリタンクが主流で、焼酎のペットボトルも人気。土地柄大きなクーラーボックスや、ポリバケツにうんとこさと入れて、ほとんど持ち上がらなくなる姿も。それらをデイパックに入れたり、台車、カートでころころ運んでいく。車があるなら河口や港に停泊している巡視船からもらうこともできる。なんかちょっとカッコよくて羨ましい。 

井戸水を浴槽に貯めた後、いつものスーパーで買物。スーパーの2L水は早くも復活していた。数万戸の断水と言えど日本全国でいえばピンポイントでここだけなので、当然と言えば当然だけど、やはりほっとする。 

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これで水の心配はほぼなくなった。あとは洗濯と入浴、掃除ぐらいで、よほどのことがなければ水道回復までは持ちこたえられるはず。お祝いにくろこさん(実家猫)をじゃらして遊ぶ。人間側の異変を感じ取ったのか、断水から妙にテンションが高く、爪研ぎの上で猫じゃらしをせがみ、遊んであげると腹が減ってかつぶしがけのカリカリをモリモリと食べ、そして羽根布団の上でケロケロと吐く。まだ水が少ないんだからそこで吐くのはやめて~。

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夕食は豪勢に、ブロックベーコンステーキ。何が豪勢って脂が出るは出るは、ギットギトだけど容赦なく焼く。そしてナスに吸わせる。さらにソーセージも果物も。そしてやっぱり水を節約しいしい食器とフライパンを洗う。 

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食後、状況 が一気に好転する。 
まず、午後5時に静鉄がまさかの全線復旧。少なくとも明日中は代行バス運行と聞いていたので、超速の仕事に「さすがは静鉄」と関心しきり……とはあんまりならず、「まあ静鉄だからね」とフツーに納得する清水っ子。(※絶大な愛着と信頼感の裏返しです)

そしてNHK総合午後7時のニュース、トップ二番目で清水断水が流れて沸き立つ。これが効果てきめんで、同県だけどちょっと遠い親戚や知人からお見舞いと確認のショートメッセージが届く。幸運にもウチは手伝ってもらいたい局面は少なかったけれど、気にしてもらえるだけでも本当に心強い。それにしても、天下のNHKの威力をまざまざと思い知った。というか、報道がなければ今もフツーに知らない人が大半だと思う。当たり前っちゃ当たり前だけど。

さらに水道局のサイト、井戸水や工業用水を流して、とりあえず生活用水(飲用は不可)が出るようにするとのこと。同時に、現在断水しているエリアの地図と工程表、取水口現状の詳細画像。まさにこれが欲しかったという情報が一気に提示された。超グッジョブ!>上下水道局さま。 


防災無線の件もそうだけど、知りたいのは『現状』であって別に「目処が立っていません」でもいい。それを定期的に、ある程度頻繁に提供してくれるだけで安心できるのに、と思う。 
ちなみに現在大阪在住の元清水市民の印象でさえ、今回の対応で静岡市長と静岡県知事は清水区で大いに株を下げたと思う。何もしていなかったとは思わないけれど、何をしているのか伝えなかったという意味で。 きっときちんと検証し反省して、ここからの対応で挽回してくれるはず。知らんけど。(※明日の朝新幹線で大阪帰る奴の余裕が文末に滲み出ている)

●9月27日(火) 
早朝、復旧成った静鉄にフツーに乗って清水を離れ、若干の徐行区間はあったもののフツーに新静岡駅に到着。徒歩でJR静岡駅に移動し、新幹線で大阪へ。 
セノバの連絡通路にあった貼り紙を頼もしく思いつつ。 

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大阪の自分の家に着くと、浴槽に防災用の留湯がたっぷり残っていて、妙な気分になった。 
きれいな水がたくさんあるのは、本当に贅沢なことだなあと。


●9月28日(水) 追記
涼元は大阪に戻っているものの、実家はまだまだ渦中にあるので聞いた現状を箇条書きで。

・相変わらず水は出ない。近所ではちょろちょろ出ているらしいのでガッカリ。
・そこに防災無線が「今出てる水は飲むな」と繰り返す。ウチは出てないんですけど!
・近所のスーパーに給水車が来ていた。中でペットボトル水売ってるのに飲料用だった。いいの?
・それ以前にペットボトル入りの飲料水もしれっと無料で配っている無法地帯だった。
・工業用水を提供してくれている工場には車で来て多めにさっと汲んでいく人が多い。
・トイレをバケツの水で流すのはコツを掴んできた。角度とか。
・宅配便は受付停止になっている。断水直後にお急ぎ便とか頼んでも届かなかったと思われ。
・料理中に鶏卵4個を床に落として割るという未曾有の大惨事に見舞われたものの、いかにして少ない水で拭くかに没頭してそんなには腹が立たなかった。そんなには。
・落ち着かないのでとりあえず赤ワインを飲んだ。

そして大阪の方はというと。
・同じくまだなんとなく落ち着かない感じなので、近所のスーパーに行ったらめっちゃ大阪の日常があったのでだいぶ感覚が戻った。
・カツ丼を買って食べた。美味しかった。
・トイレで水洗レバーを無意識に操作した後、水がどばーっっと出てきたのを見て「えっ俺何か手順間違った!?」と未だに無駄に混乱したりする。
・あと、腰。

(追記)
結局、28日の夜に蛇口から水が出ることを発見。その後すぐに、水道局の情報で飲用ができるようになったとのこと。このあたりの事情は不明瞭なものの、同じ給水エリアでも復旧に時間差があっただけなのだと思われる。

そんなわけで、9月29日(木)には涼元家では水道が復活。
入浴剤入りの湯を貯めておいたせいで変な匂いがする浴槽を洗ったり、食器を洗い直したりし、念願の風呂にも入れたが、今も断水や浸水の片付けが終わっていない地域も多く、やっぱりどこか落ち着かない感じがするとのこと。

(さらに追記)
その後、親戚のおじさんがペットボトルを引き取りに来て、同時にホームセンターで20Lの水タンクを買って置いていってくれた。ばかまめったい。

けものフレンズぱびりおんの思い出

2021年06月30日15:00 けものフレンズぱびりおんサービス終了。

自分史上初めて、サービスイン当日からサービス終了まで、ほとんど毎日遊んでいたソーシャルゲームだった。
確たるストーリーがあるでもなく、課金要素すらゆるゆる。あそびどうぐをテキトーに置いておくとフレンズが遊びに来てくれて、お礼に木の棒とか布の切れ端とかを置いていってくれるという、ぶっちゃけねこあつめライクなシステムだったけど、リアルタイムで考えたり操作する必要がないのが自分にはすごく合っていた。(なので、あとから追加されたアトラクションの方はあまり熱心にやらなかったけど)

けもフレ好きを抜きにしても、キャラのデフォルメやめずらしい行動のアクションが可愛らしかった。この仕草は原作(元になっている動物)のどの辺りから採ってるんだろう?と考えるのも楽しかったし、実際Webで調べて「なるほど!」と感心したりもした。いい感じのシーンに出会ったらスクリーンショットを撮りまくった。今もちょっとした暇があれば、指がスマホのぱびりおんアイコンを押してしまうぐらい。

サービス終了後はオフライン版として、図鑑とけもトークが閲覧できるだけになってしまったけど、ぱびりおんは今もどこかに存在して、自分ができなくなったジャパリまんじゅうの補充やあそびどうぐの交換は、馴染みのラッキービーストたちが肩代わりしてくれているのだと思っている。

以下、ぱびりおんでの自分のスクリーンショットをつらつらと。正直枚数が多すぎて吟味するのも難しいので、目についたのを片っ端から貼っていきます。(注意!画像たくさん&すっごい縦に長いです)

 

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記念すべきサービスイン初日のスクリーンショット。
表示オフすら覚えていない頃。

その後はいい感じのツーショット狙いが続く。自分にとってぱびりおんとは、仲良しペアをスクリーンショットに納めるゲームだったのかもしれない。それがもうフツーに楽しく、全く飽きることはなかった。

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場所的にはこうざんの喫茶店が好き。

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お気に入りのあそびどうぐは雛壇。なぜなら大変カップルっぽいから。

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狙っているペアがなかなか揃わないのもまた一興だった。

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「アライさーん」「なのだー!」

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「アライさーん」

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「なのだー!」

まあ、もtろんフツーのツーショットも押さえてます。アラフェネは至高。

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レアキャラや似たもの同士も来れば嬉しかった。

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もちろん、わちゃわちゃ集まってるのも楽しい。

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来てくれていちばん嬉しかったのは、何と言ってもオイナリサマ。

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超偶然で来てはくれたけど、その後ずーっとお目にかかれず、

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根性でSSプリンターを回して、ついにコンコンキッチンを引いた。
自分の全課金はこのために費やされたといって過言ではない。

で、いなり寿司が作れるようになったとたんガンガン来てくれるように。
霊験あらたか。
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このひょいって横から顔を出すアクションが好き。

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あと、スカイフィッシュちゃん。
ひとりだけ全く違うシステムで出現するので、見つけた時の嬉しさもひとしお。
あと、喋り方がかわいい。何言ってるかサッパリわからないけど。

心残りなのは、あそびどうぐ配置であんまり無茶ができなかったこと。
頑固な居酒屋店主のごとく、ついつい常連さんも一見さんも楽しめそうなものを
吟味して置いてしまう。

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クリスマススペシャルとか、

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謎の宇宙ジオラマとか。
他にもオールまわしぐるまとか、オールこたつとかやりたかったけど、
閉店が決まって客に逆ギレしてる店主状態なので 自粛。

そして迎えた最終日。エリアをどこにするかは迷ったけど、毎日必ずローテしてたので、
その流れのままゆきやまにした。

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バリバリいなり寿司をつくるオイナリサマと、見届けに来たその眷属。そして集まってくれた白っぽいみなさん。

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最後のスクリーンショット。そして……

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サービス終了。

開発や運営に関わった方々、本当にありがとうございました。

けものフレンズ関連のコンテンツはこれからも続いてくのだろうけど、ぱびりおんのエッセンスは色々なところに残っていく。きっと自分でも知らないうちに、ぱびりおんとは何度も再会する。そうやって『いいもの』はずっと残っていくのだと思う。(いや、リバイバルコラボとか、むしろしれっと復活してもオッケー)

2019年の初プラネタリウム鑑賞は、ディスカバリーパーク焼津天文科学館へ。

静岡県では有数の天文施設だし、前々から行ってみたいとは思っていたけど、いろいろと敷居が高い。
まず行くまでが大変。涼元実家の清水からだと正味1時間40分。静鉄で新静岡駅、徒歩で静岡駅まで移動してJRに乗り継いで焼津駅、そこから1時間2本のバスに揺られること二十数分。

JR静岡駅ホームの立ち食いそば屋

 バスの車窓から焼津駅前を見る

フルサイズかつ若干レトロな路線バスが不釣り合いな路地を通ったり明らかに大回りしていくのを不安に思いつつも、無事到着。
他に誰も降りない。というか、そもそも辺りに人がいない。
観光地的なものはおろか、ちょっと暇を潰すようなお店もない。(一応温水プールがあるけど、天文好きとは食い合わせが悪すぎると思う)これが敷居の高さその2。
要はハナから天文目当ての人しか寄りつけない、孤高の施設※なのである、と。

※言いすぎ。広大な駐車場があるので、ドライブがてらのコースに組み込むのが普通だと思われます。

……とか何とか言ってると、行く手にあからさまに只者ではない建物が。

ディスカバリーパーク焼津天文科学館前景

パラボラアンテナ@ディスカバリーパーク焼津

芝生広場にカジュアルに立ってるパラボラアンテナも尋常ならざるオーラを漂わせている。うん、 こういうの前に野辺山で見た。

満を持して突入。受付にてプラネタリム鑑賞大人600円+展示・体験室代金300円を払う。
プラネタリウムはともかく展示が有料、しかも300円というのはなかなか強気。普通、科学館の展示と言えば動滑車定滑車とか凹面鏡凸面鏡とかお馴染みのアレだけど、こちらのはかなりガチな双六テイストチャレンジだった。ちびっこ超ハイテンション。
でも全クリには時間が足らず、投影の時間が近づいたので涙を飲んで中途退場。

 かめ子さん@ディスカバリーパーク焼津

かっちょいい宇宙ビークルに跨がり気さくにサムズアップをくれているマスコットのかめ子ちゃん(さそり座V861星出身)に見送られつつ、上階のプラネタリウムに急ぐ。

かめ吉くん@ディスカバリーパーク焼津

かっちょいい宇宙コンソールで何やら管制オペレーション中のかめ吉くんに挨拶。入場券にハサミを入れてもらい、投影室に。

GEMINISTARⅢYAIZU GEMINISTARⅢYAIZU

傾斜型の座席の真ん中に鎮座しているのは、GEMINISTARⅢYAIZU。光学式投影機(INFINIUMγⅡ)と 全天周プロジェクターSKYMAXDSⅡ-R2のコンビネーションが最新かつ精細な星空と頭上いっぱいの迫力映像を見せてくれる。いや、やっぱりミノルタ機は(本体の)色合いがいいなあ。(惚)

鑑賞上の注意や非常口の案内などを経て、ほどなく投影開始、まずは今日の星空解説。
こちらはスカイラインが実際の施設屋上からの映像を使っていてわかりやすい。
日が沈み、一番星が見え、夜の帳が降り、今宵の星座が輝く。せっかくだから街灯かりを消しちゃいましょう、10秒間だけ目をつぶってください……鉄板かつ安心の展開の後、INFINIUMの本領発揮。機材に比べると若干木訥とした、それだけに心地のいい解説に、ともすれば瞼がくっつきそうになるのを耐えつつ(注:これ正真正銘褒め言葉なので)、星座解説終了。

続いて企画番組、『めざせアンドロメダ!宇宙探検サイコロの旅』

超高性能宇宙船でディスカバリーパーク焼津上空を出発、日本列島、地球、そして太陽系をはるかに離れる。この辺りの演出は全天周投影の面目躍如、「もし酔いそうになったらしばらく目をつぶってください」の注意喚起も伊達じゃない。
そしてメインディッシュ、様々な天体、天文現象を迫力の全周映像で目の当たりにする……って、ここまではよくあるんだけど、面白いのは『サイコロの旅』のタイトルどおり、観客がサイコロを振って、六つある行き先の二つをその場でガチで決めるという趣向。
希望者は挙手を……との呼びかけにマゴマゴしてたらサクッと他の人に。その結果、決定した演し物は……

ひとつは月の裏側
もうひとつはTRAPPIST-1

両方とも旬の話題だったので興味深く鑑賞。したものの、正直言って進行をもうちょっと早くすると他の四つもフツーに流せたんじゃないかなあと貧乏臭く思ったのも事実。ちなみに投影内容はスタンプラリーになっていて、三種類以上集めると記念品と交換できる(4/14までが期限)とのことなんだけど、もう一度ここまで来るのが正直かーなりキツい。さらに次回来てもサイコロ的に内容モロカブリする可能性もあるというウルトラハードモード。焼津まで足繁く通える環境で我こそは!という方は、ぜひぜひチャレンジしていただきたい。

そして宇宙船ははるかアンドロメダ星雲を訪れ、フィナーレ。密度的には満足だったものの、最後は地球に帰ってきて、焼津の夜明けで終わったらもっとよかったのになあ…… (個人の感想)

投影後には天文台の見学会に参加。
静岡で天文を囓っていれば必ずお名前は聞く、望遠鏡製作の名手法月惣次郎先生(すんません、ディスカバリーパーク焼津近くにお住まいだったのは初耳だったです)が生涯の最後に手がけた80cm反射赤道儀……と、情報だけは知っていたものの。

実物を目の当たりにすると、これが本当にスゴかった。

80cm反射赤道儀@ディスカバリーパーク焼津 80cm反射赤道儀_鏡筒先端@ディスカバリーパーク焼津

どこかスペースシップワンを思わせる鏡筒先端の意匠。

 80cm反射赤道儀鏡筒底@ディスカバリーパーク焼津 80cm反射赤道儀_カセグレン焦点接眼部@ディスカバリーパーク焼津 80cm反射赤道儀_導入モニタ@ディスカバリーパーク焼津

副鏡を切り換えることで、カセグレン、ナスミス、ニュートンの三焦点に光を導けるという凝りまくりの鏡筒。

80cm反射赤道儀_主鏡カバー操作部@ディスカバリーパーク焼津

そして主鏡カバーを開閉するためのフツーの釣りのリール。
「めっちゃ焼津っぽいですね」と言ったら、解説のおねいさんに半笑いされたり。

見学会は夕方だったものの、大型望遠鏡にとってはそんなのカンケーない。
カセグレン焦点の視野に導入された昼間のベガ、真っ白い針先のような星像を見詰める。
高校生の頃、別館天文台のドームにあった26cm反射赤道儀を操っている自分が蘇り、ちょっと感無量になったりした。

80cm反射赤道儀_銘板@ディスカバリーパーク焼津

 

そんなこんなで大満足。
次はぜひぜひ夜の観測会に来なければ!と心に決めた。問題はその場合、完全に帰りのバスがないんだよなあ……駅まで歩いて帰ると1時間ではきかなそうだし、道中追いはぎに遭いそうだし。

ディスカバリーパーク焼津脇の浜から眺める富士山

最後に、ディスカバリーパーク焼津脇の浜から眺める富士山を。

本年もよろしくお願いします。

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