2010年上半期に観た映画

さて、2010年も半分が終わりました。嘘みたいですが。
涼元の動向はと申しますと、今年は久しぶりの映画鑑賞ブームがやって来まして、合計6本延べ9本を映画館まで観に行きました。以下にその感想と紹介兼個人的覚え書きを。

●マイマイ新子と千年の魔法(4回鑑賞)
ここ何年か変動がなかった涼元的オールタイムベストでいきなり上位に食い込んできた、本当に本当に素晴らしい映画。
去年のロードショーを含めれば、なんだかんだで合計5回鑑賞。おかげで他の映画を観に行っても、マイマイ新子が始まらないと「あれっ?」と思う病気に悩まされ中。
ひとつの作品を味わい尽くす楽しさ、映画館で映画を観る楽しさを思い出させてくれた……挙げ句、勢いあまって気がつけば公共の電波に乗せて思いの丈を吐露している始末。何をやってるんだ涼元。
感想や鑑賞記は既にたくさん書いてるので以下から。

わたしの小さなたからもの(『マイマイ新子と千年の魔法』遅ればせながら礼賛) 

スズモトジェイピー模様替えしました&なぜかテレビに出た件&そもそも涼元はなぜ『マイマイ新子』を観に行ったのか

浜松シネマe_raにて5度目のマイマイ鑑賞

めでたいことに、7月23日にDVDも発売決定。でももう1、2回はスクリーンで観たい。
なんと公開から8ヶ月経った今でも上映が続いている…というか、新しい上映がひょっこり決まってたりするので、公式サイトでまめにチェックしてお近くの方はぜひぜひ
ハマれば十年二十年と心に残るであろう宝物のような作品なので。

●バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版
大昔に観たけれど、なんかふわふわした感じしか覚えてないので再度の鑑賞。
冒頭の無駄にスタイリッシュに撮ったジャーマンケンカシーンに、「ああ、監督の才気爆発のオサレ映画だなあ」と嫌な予感を覚えたのも束の間、コーヒーポットのアップから物語は少しずつおかしな方向へ。
一癖ある人物ばかりが集う砂漠の真ん中の気怠いカフェ、併設するモーテルに滞在することになった太ったドイツのおばさん。彼女が幸運のマスコットとなり、関わる人みんなが幸せになっていく。
気がつくと、スクリーンを眺めながらにやにや眺めている自分。このおとぎ話みたいな展開に嫌味なく持ってかれちゃうのがスゴい。
ストーリー自体はツッコミどころが多く、特に後半の以降展開は、起承転結という言葉に抗うがごとくスーパーナチュラルになり(もっと映画的にフツーに引きが作れるって)、ラストに至っては「ここで終わり?」って感じだけど、『まあそういう映画じゃないから』ですんなり納得できちゃうのはジャスミンおばさんの人徳。若干のスノッブ臭も、独特の雰囲気形成に一役買っているので不問。
ちょっとお洒落でアンニュイで、でも前向きなメッセージに満足できる「いい映画」。

●アバター IMAXシアター3D吹替版
言わずと知れたキャメロン監督のSF超大作にして3D映画の先鞭。去年観た字幕版に続き2度目の鑑賞。
筋はもう知ってるし、二度観たら理解が深まるタイプの映画ではないので、楽しむべきところは3D映像の粗探しと吹替え台詞の2点。
まずは主人公の喋り方、想像より紳士的だった。
そしてヒロイン。最初のカタコトが酷い。これはオリジナル音声でもそうっぽいけど。
3D映像は想像以上に飽きが早かった感じ。ある意味自然にできてるからこそだけど、うーん。
その後、故あって途中退場。特に未練はなし。
エポックメイキングな映画だと思うし、娯楽大作として充分に面白かったけれど、自分には1杯食べればお腹いっぱいだった。
初回に字幕版を観た感想は、mixiに書いたのを修正して別にアップしたので以下から(観た人限定オマケつき)。

アバター(下部ネタバレ注意)

●エル・スール
尊敬するビクトル・エリセ監督の2作目。
昨今のハリウッドメイクに比べて筋立ては薄いし、伏線も謎も回収されない。でも、自分にとっては紛うことなき傑作。DVD持ってるのに浜松の映画館まで行っちゃうぐらい傑作。
冒頭の夜明けのシークエンスが泣くほど好き。場面場面が瞬きを忘れるほど綺麗。少女時代のエストレリャがしっかり者で可愛い。
でも、今では娘より父親に感情移入してしまう。
20年近く前、はじめてスクリーンで観た時には、ラスト近くで「娘は強くなり、引き替えに父は弱くなるんだなあ…」としみじみしたけど、今回は「いくら悪気がなくてもその仕打ちはキツすぎ」とエストレリャに説教したくなった。まあ、アルプスの少女ハイジを観ていても、ロッテンマイヤーさん視点から「この田舎のクソガキめっ!」とか思っちゃうお年頃だし。
うーん、エル・スールについては好きすぎて逆に語る気になれない。

余談:帰りのエレベーターで一緒になったご婦人が、「わたしはじめの方で寝ちゃったんだけど、最後どうなったの? あのお父さんは?」と訊ねてこられて困った。オーラスをネタバレしないように気をつけながら説明しつつ、『エル・スールで寝ちゃうようだと、あっちはもっとキツいよなあ』と内心思った。

●ミツバチのささやき
その『あっち』、泣く子も眠るビクトル・エリセ監督の処女作。
エル・スールよりもさらに筋がなく、楽しむより感じるタイプの映画。映像が暗くて(物理的に)劇伴が超々シンプルなこともあって、『観てると眠くなる名画』を選ぶならかなりの上位に来る。(ちなみに1位はぶっちぎりでサクリファイス@タルコフスキー)アナ&イザベル萌えだけで眠らずクリヤーできたら訓練されたおにゃのこ好き認定。
エル・スールに比べて、記憶とかなり違うところがあった。それに意味不明および複数解釈できるシーンが数カ所。調べるのは野暮。感じたままをずっと取っておきたい映画だと再認識した。
映像はもちろん見事。風が吹く荒れ野をアナとイザベルが廃屋まで歩いていくシーンや、死んだふりの一幕がたまらなく好き。
今回気になったのは、『マイマイ新子と千年の魔法』との共通性。『幼い女の子が見えざるものを見る』というテーマだから当然かもしれないけど、監督さんの意識下にこの映画があったとしてもおかしくない気もする。線路に耳を当てるところなんかモロだし。

●ハート・ロッカー
アバターを押さえて賞をたくさん取ったのと、ひさしぶりのリアル指向戦争映画ということで、かなり無理して観に行ったけれど、期待しすぎたせいかちょっと残念な感じだった。
戦場と日常の中間という、特異な舞台を描くことには大いに成功していると思う。独特の緊張感もある、映像もカッコいい、音効もいい。バレットM82での狙撃合戦など、ミリタリーテイストも充分。描こうとするテーマも興味深い。
でも、エピソードのひとつひとつが場当たり的で、心情線を連続して深くたぐれないため、『爆発物処理のやり過ぎで死の恐怖が麻薬と化してしまった軍人』である主人公が、単なる直情型で自己中心的なバカと区別がつかず、感情移入できなかった。その分裂症的な描き方こそがリアルでジャーナリスティックだと評価するのは穿ちすぎというか、作り手に優しすぎると思う。少なくとも自分は、もっといいやり方があったんじゃないかと考えてしまった。
あと、この主題を語るのに2時間20分も尺が必要か疑問。映画館で飽きそうになったのは『夢の涯てまでも』以来だった。いや、『夢の涯てまでも』ははっきり飽きたけど。


参考までに、観に行くつもりで結局スルーした作品。

●アリス・イン・ワンダーランド
19歳アリスの胸が3Dでどれだけ揺れるかだけでも見たかったのだけど、宣伝でマッドハッター@ジョニー・デップを前に出しすぎていて、じゃあ揺れないからいいやと観に行かず。

●Dr.パルナサスの鏡
モンティ・パイソン時代のテリー・ギリアムは大好きなれど、その後監督した映画はハズレの方が多いという認識。地元の小さな映画館でやってはいたけど、時間が取れず行けず終い。

●パリ・オペラ座のすべて
DVDを買うと思う。鑑賞用というより資料用にだけど。


そして、下半期に観る予定の作品。(7/1現在)

宇宙ショーへようこそ
借りぐらしのアリエッティ
ライトスタッフ
2001年宇宙の旅

……と、午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本の宣伝っぽくなってきたところで終了。でもホント、いい映画は映画館のスクリーンで観るべきですわ。美術館にももっと行きたいなあ。

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このブログ記事について

このページは、涼元悠一が2010年7月 1日 22:25に書いたブログ記事です。

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