2010年下半期に観た映画

えー涼元です。
ボヤボヤしてたら情け容赦なく正月がやって来たので、仕方なく酒とか飲みながら祝っておりました。
さて、本年は涼元にとっていよいよアレな歳に……じゃなくて年になりますので、よろしくお願いします。詳細についてはおいおいということでひとつ。

いきなり振り返って2010年は、近年の涼元としては破格に映画を観まくった年になりました。
上半期分はこちらに書いたので、今回は下半期分をば。
本来は年末にアップするはずだった内容であることには気づかない振りをしていただければ、今年一年健やかに過ごせるでしょう。涼元が。

●借りぐらしのアリエッティ
ジブリ映画を映画館で観るのは(ゲド戦記をスルーしたので)『崖の上のポニョ』以来。
ポニョは正直アレだったので、あまり期待しなかったのだけど……

『人間の家で冒険する小人の話』だから、キモはいかにリアルな小人体験を観客にさせてくれるか。この点に関してはおおむね満足。
渓谷のような台所、粘着テープや釣り針を使ったクライミング、小人が聴いた『音』の描写、人間にとってはさもない日用品、例えば角砂糖やティッシュペーパー一枚が大事な獲物である点。
他にも、水滴や砂糖の欠片とか、身体が小さくなったら体験するだろう描写が(一部おやっと思うところもあったけど)ちゃんとなされていて、感心したしワクワクもした。

ただ、脚本がちょっと……いやかなり。
ストーリーラインは、観客が思うであろう「おやっ?」とか「今のどういうこと?」を無視して最短距離を突っ走り、それに合わせてキャラクターも意図不明瞭な行動を繰り広げる。
お手伝いさんは言うまでもなく、なによりショウが酷すぎる。何の脈絡もなく「きみたちは滅びゆく種族だ」とか言われてもなあ……
観客の憑坐役がこれでは、感情移入のしがいがない。
頼れるはずのアリエッティのお父さんも、話の都合だけで致命的な失敗をいくつも強要されてるし。せっかくアリエッティがいい感じに描けてるのを、他のみんなで足をひっぱってる感じ。
ある程度は原作のストーリーを踏襲したせいなんだろうけど……舞台を日本に移すような大翻案はするのに、そこは放置ってのもおかしな話だし。

ここのところのジブリ映画は映像美に頼りすぎて人間を細やかに描くのを放棄していると思う。アリエッティにもその悪癖はやっぱり受け継がれていた、残念ながら。
でも、細かいことを考えず冒険部分だけをつまめば、それなりに楽しめたのも事実。受け手が求めるメインディッシュをきちんと供することは大切なんだなあと。だからといって下ごしらえとか付け合わせとかを疎かにしたらダメだけど。

●宇宙ショーへようこそ
『マイマイ新子と千年の魔法』のように、非アニメマニア向けで丁寧に作られたアニメーション映画。こういう作品枠がもっと増えてくれると個人的には嬉しい。売るのが大変そうだけど、自分がいいと思ったらできるかぎり広める努力をしたいと思う。

緑豊かな山間の小学校、子供たちだけの夏合宿。
宇宙から来たという喋る犬、ポチを助けたことから、宇宙を股にかけた大冒険の旅に……
アニプレックスが力を入れただけあって、全編『これでもか!』というびっくり箱的映像の奔流。画面を見ているだけでもワクワク楽しい映画、ではあったのだけど。

よくも悪くも詰め込みすぎで、人を選ぶ映画になっちゃってる印象。
例えば、重要キャラであるポチの設定が場面場面で都合よくぶれまくっているのを、愛すべきお約束と取れないと、『とっちらかった駄作』扱いで終わっちゃいそう。
また、駄菓子詰め合わせ的賑やかさが、逆にテーマを埋没させていたのが残念。姉妹の信頼をメインに描くなら、ギミックはもっとシンプルにした方が心に届いたのでは。それこそ、宇宙に行かずに全編学校だけでもよかったぐらい。完全に本末転倒だけど。
作り手の気合いは伝わってくるし、映像の上質さ、バラエティーに富んだ感覚が心地よかっただけに、かーなりもったいないと感じた。何より好きなタイプの題材がてんこ盛りだし。テレビシリーズとして全6回ぐらいでやるべきだったんじゃないかなあ……

余談ながら、鑑賞中に映画館の冷房が効きすぎていて、宇宙空間を大変リアルに体験できた。全く以て嬉しくないリアルだけど。

●マイマイ新子と千年の魔法(2回鑑賞)
2回鑑賞というのは、『7月以降にまた2回観た』という意味。
既に涼元オールタイムベスト10入りしている名作なれど、何度観ても新しい発見がある。
で、ついに国衙の野外上映会にまで行っちゃったり。

マイマイ新子野外上映会in国衙会場ポスター

上映用大スクリーン

上映直前、曇天下のスクリーン 

本当に感動的な体験だった。映像も音響も思いの外素晴らしかった。

さらにその2週間後、京都は新京極の映画祭でも鑑賞。
DVDも買ってあるのに、やっぱりスクリーンでかかってるとほいほい観に行っちゃう。もはや自分の時間の一部、そういう映画。

●REDLINE(3回鑑賞)
外連味と勢いと爆音だけでできている、愛すべきSFレースバカアニメ映画。
なんだかんだで気に入って合計3回鑑賞。初回時の感想はこちら

制作ウン年とか手書き十万枚とか声優キムタクとか、わかりやすい(わりには効果的に宣伝に使えてないのが歯がゆいけど)売りを別にしても、『作りたいものを作ってるんだな』というのがどストレートに伝わってくる、痛快無比な作品。
特にBGMは白眉。サントラはもちろんED曲(名曲!)"REDLINE DAY"のリミックスアルバムも即買いし、現在ヘビーローテーション中。
本編の方もDVDかブルーレイで出たら即購入予定。『即効性元気の素』的鑑賞ができる作品だと思う。本当は映画館で爆音鑑賞するのがベストなんだけど。
ロードショー形式で、客入りが悪い映画に午前やレイトショーをあてがうんじゃなくて、『向こう半年間、金曜日の夜には大スクリーンでREDLINEをかける』みたいな形態もアリなんじゃないかと思った。こういう作品を生かせないなら、映画業界の仕組み自体がおかしい。

●ライトスタッフ
午前十時の映画祭にて鑑賞。
人類初の音速突破からマーキュリー計画まで、米ソの宇宙開発競争……というか、アメリカの宇宙開発黎明期を、実話を元に重厚に描いた、上映時間193分の大作。
本当に本当に好きな映画なので、ぜひとも大スクリーンで観たかった。念願叶って大満足。
この映画のキモは、なにより人間ドラマとして素晴らしいこと。
テストパイロットの頂点に君臨し続けるチャック・イェーガーと、マーキュリー計画に参じた新世代の飛行士たち7人。この二つの軸を、単なる対立ではなく、『正しい資質』というキーワードで徐々に結びつけていく展開。ここが本当にカッコいい。
ドビュッシーの『月の光』に乗せ、サリー・ランドの裸身が舞う。地上の栄華を謳歌する時にさえ、7人の飛行士たちは気づく。「今この瞬間にも、高みを目指す奴がいる」と。
他にも細かいことを言えば、冒頭でミッシングマンフォーメーションをしていた編隊はT-33だけどF-80のつもりなんだろうなあでないと年代的に合わないしとか、高度記録挑戦のF-104は塗装以外はNF-104風への改造も特にしてなかったんだなあとか、半可通視点でも改めてじっくり楽しめた。

観終わった後も興奮冷めやらず、弁天町の交通科学博物館まで行ってX-1のロケットエンジンまで鑑賞した。
ベルX-1ロケットエンジン展示
こんなんでマッハ1とか出したのか~と別の意味で感動。その横のMe163のエンジンよりはマシだけど。
多分来年も観に行っちゃうと思う。というか、次は余裕を持って席を予約したい。

●2001年宇宙の旅
同じく、午前十時の映画祭にて鑑賞。
言わずと知れたSF映画の金字塔、上映時間141分の大作……なんだけど。
ライトスタッフとは対照的に、今観るとちょっとアレだなあと。
特撮部分(冒頭猿含む)が長回しすぎてテンポが悪いのと、やっぱりどう観ても説明不足すぎて「足りないものをなにか誤魔化してない?」と邪推してしまう。
それでも、『あの2001年がスクリーンで流れている』という感動はやっぱりスゴかった。富士山と一緒で、機会があれば一生一度は映画館で観るべきだと思う。実際満員だったし。
オリジナル通りに途中で2分間のインターミッション(休憩)が入ったけど、観客が続々とトイレに立ち、そして続々と間に合ってなかったのが印象的だった。なんの罠だ。

●SPACE BATTLESHIP ヤマト
初代ヤマトをほぼリアルタイムで観ていた世代としては、負けるとわかっていても戦わなければならない宿命の強敵、それが実写版ヤマト。
決死の覚悟を持って鑑賞。感想は……

『ゆかいなネタ映画を観に行ったつもりが、良くも悪くも予想より真面目に作ってあってリアクションに困る』

シナリオは堅実なまとめ仕事をしていたと思う。
1作目2作目含めた長ーい原作をうまいこと摘んで再構築していたし、「なるほどそうするか…」という新解釈もあった。
でもなあ……演技とカメラワークが大変に残念。

演技は全体的に学芸会な感じ。
敵艦を撃沈した時など、艦橋クルー一同の喜びようは、ナンボなんでももうちょっとリアルにできるだろうと逆に感心するぐらいマンガチック。それをわざわざ艦橋内が全部入るぐらいのロングでのぺーっと映すカメラワークが安っぽさに拍車を掛ける。いつメインスクリーンでデスラーのおかんコント@笑う犬が始まってもおかしくないぐらいギャグチック。
特撮も「邦画としては頑張ってるよね」レベルで、ツラいところは正直ツラい。ハリウッドメイクにようやく周回遅れというか。
年末のドラマ特番として観るなら「思ったよりよかった」と前向き評価ができるけど、映画館で観るには相当に微妙だった。
それでも、ヤマト世代なら「これだよこれ」という名場面はちゃんと織り込んであるし、ツッコミポイントも数々あったので元は取ったと思うし、観る価値なしと切り捨てるようなものでもないし……うーん、やっぱり中途半端なのかも。どちらかに振り切れてればもっと印象にも残ったし、良くも悪くも楽しかったんだけど。

以下、せっかくなので鑑賞ポイント箇条書き。(ネタバレといえばネタバレ)

・あの↓な制服を上着だけにしたのは慧眼。慣れればフツーにカッコよく見えるから不思議。

・「波動エンジンの設計図じゃなくて、最初から放射能除去装置の設計図を送ればよかったんじゃないの?」という往年の疑問に対して、別に入れなくてもいいフォローが入れてある。

・大変わかりやすい死亡フラグ:第三艦橋勤務

・佐渡先生が大変なことにっ。

・アナライザーはもっと大変なことにっ。

・コスモゼロだってそりゃもう大変なことにっっ。

・キスシーンの突っ込み方が無理矢理すぎて、一瞬何が起こったのかわからない。

・キムタクの演技は、最早「キムタクっぽい」という段階を超越している。古代進の設定の方をデフォルトのキムタクに合わせてあるので、キムタクはキムタク以外の何者でもない。ってキムタクって何回書いてるんだ。大ファンか。

・柳葉敏郎の真田さんはお似合いなれど「たしかこの前伊号潜水艦に乗ってた気が…」と思うのも仕方無し。役柄までモロカブリだし。

・ガミラス帝国とデスラー総統が○○○○されたのは、海外展開を考えると仕方無いんだろうけど……やっぱり決定的に物足りない。ただし、顔はちゃんと青い。

・「俺を残してお前は行け」「いいえ一緒に残ります」がナンボなんでも長すぎ。クドさで笑わせるコント並みに長すぎ。

・結論:キムタクの波動砲は一発必中。

……けっこう楽しんでるやん>自分。

●番外編:観たかったけど結局観なかった映画
・アイガー北壁
近くの劇場でかかっておらずタイミングを逸した。残念。

・武士の家計簿
まだやってるので観に行く可能性あり。むしろ原作が読みたい。

そして最後に、2010年封切り映画の涼元的ベストは……

REDLINE

これはもう全俺満場一致で決定。未見の方、映画館上映の機会があったら、ぜひぜひ観に行って欲しいです、はい。

では皆様、よいお年(2011年的な意味で)を~。

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このブログ記事について

このページは、涼元悠一が2011年1月 4日 22:45に書いたブログ記事です。

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