根津美術館&サントリー美術館鑑賞

5月5日。
ゴールデンウィーク2度目の美術鑑賞。
今度のブツは花の都東京は根津美術館収蔵のアレ。

紅白梅図屏風見たさに毎年2月MOA美術館詣でをする光琳萌え野郎としては、前々から観たいと思っていた大物。なれど、何かというと補修してる上に、紅白梅図屏風と同様、その花が咲く季節にしか展示しないため、なかなか機会に恵まれなかった。

今回ようやく念願叶う。感無量。
あと、最近出不精が極まっている父を引っ張り出すのも目的のひとつ。

JR静岡駅。入線してきた700系のしゅっとした鼻面に、「新幹線ってのはこんな形だったか?」と怪訝そうな父を伴い、混み合う車中に腰を落ち着け……ようと思ったら、3列席の端が絵に描いたような外国人旅行者さんで、おニューの一眼レフデジカメ片手に大はしゃぎ中。生温かく見守りつつ(いいから座って落ち着け)、ものの1時間で品川へ。新幹線速い。

山手線で渋谷、銀座線で表参道下車、さらに徒歩5分で根津美術館着。思ったよりフツーに街中にあって拍子抜け。以前に来た印象から、もっと全体が緑に囲まれていると思っていた。

オシツオサレツっぽい生き物を模った入場券を2枚買って、シンプルな内装のロビーに入る。
端午の節句という最高の日取りもあり、当然ながらの混みよう。とりあえず展示室へ。
特にもったいぶるでもなく、いくつかの豪奢な屏風(これらも名品)を露払いとした先に、それはあった。

尾形光琳作『燕子花図屏風

一見の印象、「軽い」。
正確には、かろやかというべきか。
下地の金と、葉の緑と、花びらの紫、たったそれだけの構成。
主線がなく、いかにもすっと力を抜いて描かれているけれど、その実計算しつくされているのだと思う。ディティールが色に溶け込んでいるせいで、花も葉も風に揺られ、陽に揺らいでいるよう。印象派を何年先駆けてるんだと呆れるけれど、このしがらみから無縁な佇まいを前にしては、技法云々なんか野暮そのもの。頭がかちりと切り換わる。

燕子花が音符で、その並びが楽譜。
そう喩えるのはアリだけど、ありがち。
さらに踏み込み、奏でられる曲がどんな『音』なのか、できるだけ具体的に想像してみる。
ヴァイオリンでもない、ピアノでもない、琴でもない、リコーダー、チェンバロ……近いけど違う。ごく薄いガラスの筒、高く響く金属の鈴、もっともっと軽やかな音……メロディーはどうだろう? 雅楽、印象派、バロック、現代音楽……当て嵌めては首をひねり、より近い調べを探っていく。
これは楽しい。かなり愉しい。

たっぷりと20分ほど、自己流鑑賞を堪能した。
響きの余韻を楽しみながら、広い庭園を散策する。
中央の池にこれでもかと植わっているリアル燕子花を眺め(ベスト撮影ポイントは大行列)、併設の喫茶店ににべもなく振られ(こっちも行列)、結局また、燕子花図屏風の前に戻ってきた。
さっきよりさらに混んでいるけれど、折良く作品前の椅子が空いたので、ここぞと陣取り、さっきよりはもう少し穏やかに印象を焼きつける。

他の展示も充分に楽しみ、1時間半ほど後、根津美術館を辞した。
どんなに有名な作品でも、自分の目で見なければやっぱりダメだなあと再認識させられた。
もちろん大満足。

まだ日が高い。
となればここはハシゴだろう。
じわじわ汗をかきながら徒歩で青山霊園を突っ切る。「この辺にあんな建物あったか?」と、彼方に聳え立つ六本木ヒルズを見て怪訝そうな父を伴い、サントリー美術館へ。

こちらの出し物は、『和ガラス ―粋なうつわ、遊びのかたち―
17世紀からの和製ガラス製品を、芸術性や技法ではなくあくまで用途によって分類して見せるという趣向。いい感じ。

小洒落たグラス、徳利、鉢、小皿、エトセトラ。
骨董好きの涼元父は、最初からかぶりつき状態。
国宝燕子花図屏風に比べれば、たしかにぐっと身近&お手頃な感じ。もちろん買えないけど。
骨董にはあまり明るくない息子にしても、こんなのが普段使いできたらどんなにいいだろうと思うものあり。まあ、使ったら早晩割るけど。
フロアが替わると、装飾品がメインとなる。
溜息が出るように美しく繊細な細工物ばかり。金魚玉、風鈴、雛道具。
中でも細いガラス棒を竹ひご代わりにした虫籠がスゴい。
こんなの使えるのはどんな金持ちだか……というのもあるけど、何より無事に残ってるのが。壊れるって、絶対。リアルに割るとこ想像できちゃうし。

サントリー美術館を辞し、そろそろ空腹なれど田舎者にはあまりにオサレすぎる東京ミッドタウンでの一服を諦めて、六本木のテキトーな喫茶店でアイスコーヒーのみ腹に入れる。
それから秋葉原にて、火山灰をかいくぐって日本に帰ってきた涼元姉と合流。
見てきたばかりの美術品の印象を肴に、例によってヱビスビール。

大変充実した一日だった。色々な意味で。
父も疲れてるっぽいけど楽しんだ様子。つーか、息子に引っ張られるでもなく、たまには自力で遠出してください……などと言っていたら、「関西に住んでるのになぜ観に行かないっ!」とばかりに、松林図屏風を強力に薦められてしまった。

ううう、墓穴を掘ったかも。

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このブログ記事について

このページは、涼元悠一が2010年5月 5日 23:12に書いたブログ記事です。

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