サントラ御礼&あの凸っぱり再び&PS2版後書きにかえて1&声優さんという人種

涼元@明日から東京行きです。
また性懲りもなく病み上がりなので、ちょーっと不安ではあるのですが。
さて、今回はplanetarianがらみのことなどを、つらつらと。


●まずはplanetarianオリジナルサウンドトラック、おかげさまで上々の販売数のようで、夏コミ会場でお買い上げくださった方、まことにありがとうございます。また、イラストブックに参加していただいた絵師の方々、お忙しいところ作品を寄せていただきありがとうございました。不肖涼元からもお礼申しあげます、はい。
このサントラはおいおいビジュアルアーツの公式通販でも発売されるかと思いますが、限定的ながら恐らくイラストブックも附けられるのではなかろうかと思わ れます。涼元の希望的観測でアレなのですが、こちらにもお問い合わせをいただいているので、ご参考になればと。

planetarian ~ちいさなほしのゆめ~ PS2版、 いよいよ8月24日から発売開始であります。PC版の時同様、初回生産分には涼元悠一書き下ろし小説がついているのですが……先日、これが涼元宛に100 冊どーんと送られてきてビックリ。PC版の時に自分の分がない~とか愚痴をこぼしたせいで、プロトタイプの多部田氏が気を回してくれたのではないかと思わ れますが。段ボール箱4個口で、戸口まで台車に乗ってきましたぜ。まさに売るほどある状態。一瞬社長をイジリすぎた廉で、VAのギャラが現物払いになった のかと思いました。

●PS2版後書きにかえて1 ボイスとテキストについて
普通、ボイス付きのノベルゲームを作成する場合、シナリオがある程度出来上がってから声優の選択をするものなのですが……planetarianの場合、ちょっと違っていました。
まずオープニングだけのパイロット版が作成され、この時点で『プラネタリウムはいかがでしょう?』という、物語の中核となるべき一連の台詞は既に収録されていました。
もちろん、ヒロインほしのゆめみの声は、この時からすずきけいこさまです。
ただ、ダウンロード版時点ではボイス付きは難しいというのは開発当初からわかっていましたから、シナリオとしては最低限のボイスでも、最大限演出として活用する方向で執筆したつもりではあります。
最初にいただいた声の欠片があり、そこからキャラが膨らみ、シナリオが起こされ、全ての声が当て嵌められ、さらにそこから磨きをかけるという、希有な製作形態によりもたらされたのが、planetarianという作品です。
これは、プラネタリウム番組そのものが、投影機が映し出す星空と解説員さまの声により成り立っているという事実からすれば、まことに理にかなったことだったなあと、手前味噌ながら思っています。

ボイス付きのplanetarianでは、ボイスなしのヴァージョンに比べて、テキスト自体にも多少手を加えています。基本的に涼元は、たとえ画面上での 状況や立ち絵の演技と重複しても、地書きは積極的に書いていくべきだという考え方なのですが、planetarianではじめて、その原則を積極的に抑え ることになりました。
ボイスが付いたことにより、声による演技そのものが文字通り全てを『言い表している』ように感じたので、地書きによる説明をカットしたところがあります。
また、ボイスが付いたことによって、台詞の意図するところが過度に『饒舌』になり、熟慮の結果、台詞自体をボイスと共にカットした箇所もあります。

自分としては、まさに『得難い経験』でした。
もの書きのはしくれとして、自分が一度完成させたテキストをそういう理由で直すことがあるなんて、正直思ってもいませんでしたから。

これはもちろん、すずきけいこさまの演技の正確さと素晴らしさから産み出された、ある意味『嬉しい誤算』なのですが……ノベルゲームという複合表現形式が 持つポテンシャルの高さと可能性そのものを目の当たりにした思いでした。同時に、まだまだ自分は、このメディアの神髄までは達していないんだなあと、 ちょっぴり落ち込んだりもしましたが。

ともあれ、大年増状態からゲーム業界に潜り込ませていただいた自分の一成果のまとめとして、planetarianは自分にとっても忘れられない作品であ り、製作に参加してくれたビジュアルアーツスタッフ、素晴らしいキャラデザ/メカデザと共に、凝りすぎな立ち絵差分をうんとこさと描いていただいた原画担 当の駒都えーじ先生、そしてボイス担当のすずきけいこさまには、本当に幾重にも感謝しております。
またいつか、どこかで一緒にお仕事できる日を楽しみにしております、はい。


●ボイスがらみの話が続いたので、おまけにもう少し。
シナリオライターの立場から言うと、声優さんのお仕事というのはかーなり憧れるところがあります。なんというか、こっちが草食動物ならあっちは肉食動物、 こっちが農耕民族ならあっちは狩猟民族、という感じで。やり直しがきかない一発勝負の世界に生きておられる方々は、その才気や技術と共に、強烈な個性をお 持ちの場合が多いように思います。
以下、当たり障りのないところから少しだけ。

AIRの声録りをしていた頃、いつも通り開発室でキーボードを打っていて、ふと後ろを振り返ると、かわいい女の子がいました。ひ~らひらのワンピースに浮世離れしたツインテール、入り口のテーブルに積んであるAIRグッズを、なぜか熱心に漁っています。
どう見ても危ない系の方です。開発室に入り込んじゃっています。
『目を合わせちゃダメだ、気づかない振りをするんだっ』と自分に言い聞かせ、脂汗を垂らしながらキーボードに戻ろうとすると、その女の子はにっこり笑って一言、
「田村ゆかりですー」

そんなこんなの愉快なご登場でしたが、演技の的確さ、お声の素晴らしさと言ったらそりゃもう筆舌に尽くしがたいものがありました。声録り休憩中のエピソードもあるんですが、面白すぎて色々支障があるので自粛しておきます。

東京のとあるスタジオでは、永井一郎先生にお声をいただきました。平安時代に実在した人物がモデルの高僧という設定なのですが、ブースに座って台本を開くなり、全てのセリフをまったく淀みなく一発で喋り切った後、そのキャラの声音のままで一言、
「さあ、始めましょうか」
……いえもう、今のでお腹いっぱいです、至福の時でした、お疲れさまでした~という感じでした。(もちろんその後にちゃんと収録しましたが)
この時は、丘野塔也氏が途中からヘルプに来てくれたのですが、「どうして録音スタジオでNHKのラジオドラマ流してるのかと思いました」と言ってました。それほどのクオリティー。

そして前出すずきけいこさま。
planetarian声録り時、「えーと、プラネタリウムの解説員って設定なんですけど」と説明するが早いか、
「本日は当館にお越しいただき、まことにありがとうございます……」
間も抑揚も完璧な、マジプラネタリウム解説員喋り。
他にも、ちょっぴりやっていただいたデパートアナウンスが本物もびっくり……というかむしろまんま本物で、その辺りはゆめみのボイスの喋り分けにも見事反映されています。
でも、なにより度肝を抜かれたのは……
「これ、フルボイスにしましょうよ~。絶対いいですよーほらこんな感じで。『だって…おいていけないよ、ゆめみちゃんをおいてくなんてっ………』(以下略)」
……台本を見もせずに、端役キャラまで感情移入全開で披露してくれました。


……どうしてそんなことができますかあなたがた? という感じです。
基本農耕民族で基本小度胸で小さなことからコツコツとが信条なもの書き族としては、もう『人種が違う』としか言いようがありませんです、はい。


ではでは、今回はこの辺で。
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このブログ記事について

このページは、涼元悠一が2006年8月22日 00:00に書いたブログ記事です。

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