先日の浜松訪問時、宿を提供してもらった旧友が来阪したので関西案内を買って出た。
行き先は当然明石。JRの駅から線路沿いの路地を東進すれば見えてくるいつもの建物、明石市立天文科学館。でも今日はどこか様子が違う。
屋上にある天体観測ドームのスリットが真っ昼間から開いている。ということは……
宇宙開闢の歴史を1年に見立てた展示を眺めつつ、らせん階段をじりじりと登り、16階に到達。そこで待っていたのは……
西村製作所製40cm反射望遠鏡。つまり、イエナさんならぬ西村さん。
視野に導入されていたのは昼間の金星。青空をバックに、真っ白でほんの少し縁が欠けた星が、どこか気恥ずかしそうに、控えめに映えているのを見た。
それから、顔馴染みの投影機にご挨拶。
その回の解説は落ち着いていて心地よい女性の声。諸注意、天頂の位置、北極星の位置、太陽から一番星、日没、今宵の夜空と進み、『目をつぶってください』に誘われて……満天の星空。いつ来ても変わらない、優美で穏やかな星々の輝き。
10月の投影プログラムは『キトラ古墳に描かれた星空』。石室の天井に描かれていたという古代中国の星座の再現。圧巻だったのは、歳差軸を動かして、天の北極の位置をキトラ古墳に描かれた当時まで遡らせるという趣向。まさに、『プラネタリウムはタイムマシンでもあるんです』の再現。本当にいい投影を見た。お勧め。
相変わらず充実している展示物と、地元の学生さんの力作自由研究展示を興味深く拝見した後、科学館を辞す。明石市街で名物玉子焼きとビールで腹ごしらえして、三宮に河岸を代える。
午後4時過ぎ。夕暮れが近づくポートターミナルで行われていたのは、川崎重工創立120周年記念展。
旧日本陸軍 三式戦闘機 飛燕。
太平洋戦争時、ドイツのダイムラー・ベンツ社製液冷エンジンを日本でライセンス生産したハ40、それを独自に高出力化したハ140を搭載した改良型。ハ140を積む飛燕二型の生産数は100に満たない。産みの親である川崎重工が社を挙げたプロジェクトとしてレストアした機体の展示。
第一印象は『大きい』。普段暮らしていて、戦闘機を間近にする機会はない。それから、一人の人間を空で戦わせるための仕組みとして、この規模とこの価値は適正だったのかどうか、そんなことに思いを巡らす。
でも……理屈はどうあれ、美しい形。そう感じるのも動かしようのない事実。必要以上に美化する必要も、卑下する必要もない。目前に再現されている翼とその心臓そのものが、誇らしげに、控えめに、そう語りかけてくる。
傍らに展示された新旧カワサキ製過給器搭載バイクもまた同様に美しかった。あの怪物たちにまたがってアクセルを全開しろと言われたら、同じ感想を言えるかどうかは別の話だけれど。
諸々堪能した後、ポートライナーを逆に辿って三宮から帰路についた。
充実しまくりの一日。歩きすぎた翌日は筋肉痛気味だったけれど、悔いはなし。また行こう。