涼元版:はじめてクロスバイクを買うなら

日曜日、大雨の午前中。
だらだらと書きものしていたら、しばらく疎遠だった知り合いから電話あり。
「クロスバイクを買って通勤とかツーリングとかしたいけど、どういうのを買ったらいいかよくわからない」とのこと。

趣味は女と車いじりで、自転車なんぞに凝っているようなネクラな輩はハナから相手にしていなかった彼の口から『クロスバイク』なぞというステキ単語を聞くことになるとはと、深い感慨を覚える。まあなんで今さら自転車かというと、某峠でついに愛車(アホのようにいじったR34)をお釈迦にした挙げ句、最近導入した嫁さんから排気量661cc以上の車禁止令を出されてしまったからだそうだが、その辺りの事情に関してはリア充乙という感想しか持ち得ない。

こちとらMTB黎明期から、中学入学祝いに買ってもらった6段変速セミドロップハンドルのチャリから泥よけからなにから全部取っ払ったやつで近所の公園に乗り入れてコケまくり、その後ようやくMTB(カワムラニシキマウント646)を買ってもらって日本平や船越公園でコケまくり、ケルビムでフルオーダーした軽量MTBで竜爪山や小鹿の裏山でコケまくり(中略)いつしか自転車屋でバイトしつつスポーク1本から自転車1台組めるまでに(今は無理)なった男。そして今まさにクロスバイクで通勤している男。付け加えるなら独身男。

そういうことならと、思う存分ねっとりみっちりアドバイスをしていたら、気がついたら夕方に。
教えたがりの悪癖も手伝い、情報量が多すぎてきっと頭に入ってないだろうなあと思ったので、ここにテキスト化することにした。
もしもこれからクロスバイクを…と思っている方がいたら、参考にしていただければ幸い。まあ、かなり極端なことも言ってるので話半分で。

 

●おすすめクロスバイクは?
・まずは予算。スポーツバイク初体験でも最低5万円出したい。安物も自転車として使えるけど、「蟹もカニカマも食べられるから同じ」ではない。スポーツバイクにおいては、5万円がカニカマから(一応本物の)蟹になるラインだと思う。

・逆に上限は10万円程度。それより高くてもまだ価値はわからないだろうし、タイヤやホイールが華奢(そのかわり軽量)だから乗るのにある程度のコツがいる。

・自転車本体とは別に付属品でプラス1万円、ヘタをしたら2万円ぐらい必要かも。むしろこっちをケチるべきじゃない。

・ブランドとか部品のグレードとかフレームやフロントフォークの材質とか色々あるけど、どれも大して変わらないので、色や見た目で好きなのを選べばいい。部品なんて後からいくらでも替えられるし、なんならフレーム自体も替えられる。

・でもひとつだけ忠告すると、クロスバイクにサスペンションは不要。特に5~10万円クラスについているような安物サスはデメリットの方が大きい。段差や砂利道がどうしても気になるなら、タイヤを太いのに交換する方がナンボか効果的。

・できるだけ近所で、スポーツバイクの店頭在庫が普通にあって、できれば盗難保険に入れる店(サイクルベースあさひとか)で買うべし。大阪在住ならなおさら。

●最初に必要な装備
・サイクリンググラブ(手袋)は絶対必需品。夏場なら指切グラブ、冬場なら防寒グラブを自転車と一緒に買う。そして乗る時は必ずつける。

・フロントギヤにチェーンガードがないなら、ズボンの裾まとめ(バンド)も必要。

・カギは1メートル以上あるワイヤー錠が必須。駐輪時は必ず(必ず!)固定物にくくりつける(アースロックする)こと。 たとえ安物でも、愛着ある自転車が盗まれれば精神的ダメージがでかい。

・エアゲージ付ポンプ(空気入れ)も必要。スポーツバイクは空気圧管理で快適さが違う。

・パーツ(チェーン)クリーナー、チェーングリス、潤滑油の三点は必ず揃える。自転車屋で専用品を買うのではなく、ホームセンターで大缶の安物を買ってまめに注油する。質より頻度。

・きちんと乗りこなして週末ツーリングに行くようになれば、携帯用空気入れ、パンク修理セット、最低限の工具も欲しくなるはず。

●オプションパーツについて
・道路法規上ベル(とリフレクターとライト)がなければ公道を(夜間)走れない。ベルとリフレクターは通常自転車についている。ライトは別売りなので予算に計上する。

・泥よけを最初につけてしまうと、恐らく一生街乗りだけで終わる。泥よけを買う予算があったら、いちばん安いサイクルコンピュータをつけるのがお薦め。スピードや積算距離が出るので走るのが楽しくなる。雨の日は…乗らない覚悟をする。

・雨の日も自転車通勤するので泥よけをつけるなら、必ず自転車用の雨具も買うこと。傘をさして乗ろうなんてバカなことは考えない。

・できればスタンドもつけない方がいい。不便そうだけど慣れればどうにでもなる。通勤事情でどうしてもという場合はまあ仕方ない。

・荷台も要らない。荷物はデイパックに詰めて担ぐ。そしてデイパックにはまめにファブリーズする。

●乗る前に交換したい部品
・まず、シートポストバインダーがクイック(レバーを緩めるとサドルが上げ下げできる)だったら、アレンキー(六角レンチ)で固定するタイプのバインダーに交換する。クロスバイクでは一度サドル高を決めたら動かさないので、サドル盗難のイタズラ防止が優先。

・同じく、ホイールがクイックレバーで固定されていたらアレンキー締めのホイールスキュワーに交換する。これも盗難防止。

・次にペダルをチェック。両面対称じゃない安物ペダルは乗りにくいだけで何のメリットもないので、乗り出す前に両面対称のペダルに交換推奨。(トークリップをつける場合はそのままでもいいが、どのみち壊れるのを覚悟しておくこと)

・シートポストサスペンションがついていたら、乗り出す前に普通のシートピラーに交換。そこは伸び縮みしてはいけない場所。プロならミリ単位でポジション出しをするところが、乗ってる最中びよびよ動いていたら話にならない。

・リヤスプロケットがメガレンジ(ローギヤだけ不自然に大きい。超激坂用秘密兵器的なノリなんだろうけど使わないと断言できる)だったら、クロスレシオ(11T-28T)のスプロケットに交換がお薦め。適切なギヤ比が選択しやすいので、シフトチェンジを積極的にするようになるし、走っていて疲れない。(早めに替えた方がチェーンと馴染みを出しやすいので、予算に余裕があれば乗る前に交換推奨)

●乗り始め
・【最重要】スポーツバイクでは爪先が地面に届かないのが当たり前。信号待ちなどの停車時は、サドルに腰掛けたまま止まらない。腰をサドルから前にずらして、両足を地面に着く。発進時はペダルを踏み込みながら腰を戻す。

・サドルの高さは、ペダルに踵を置いて膝が軽く伸びるぐらい。「高すぎるかな?」と思うぐらいがちょうどいい。漕ぐ時は踵でなく足の前半分をペダルに置く。

・最初はシートポストバインダー用のアレンキーをポケットに入れておき、5kmおきぐらいにサドルの高さをこまめに調整してみる。慣れると5mmで明らかに足の回る感じが違うのがわかる。自転車に乗る時の靴を決めておくとなおわかりやすい。

・サドルにどかっと座るのではなく、サドルとペダルとハンドルで体重を三分割して支えるイメージ。婦人車とは別の乗り物だと心得るべし。

・最初は尻や腰や手のひらや腕が痛くなったり、普段使わないところが筋肉痛になったりするが、気に病む必要なし。我慢して1ヶ月も乗れば、必要な筋肉が自ずと鍛えられる。

・ブレーキは人差し指と中指の二本だけでじわっと握る。四本指でぎゅっとかけると効きすぎてかえって危ない。比率はフロント7割リヤ3割。必ず車体が立った状態でブレーキングし、それからコーナーに侵入すること。

・積極的にシフトチェンジする癖をつける。特に、停車する前にはギヤを落とす。どのぐらい落とすかはすぐにわかる。発進したらすぐに加速しながら3~4段シフトアップし、巡航に使うギヤにできるだけ早く持っていく。この辺はレーシングカーと同じ。「レバーをガチャガチャするなんてガキっぽいし」とか思って横着するな。

・段差を超える時はスピードを充分落とし、サドルから腰を上げる。その状態で、腰から下でショックを吸収することを心がける。スキーのモーグルみたいな感じ。これもやれば慣れる。

・ギヤが入りにくかったりブレーキの握りしろが増えたり、ホイールやヘッドにガタや振動を感じたらすぐに買ったお店に持ち込んで点検整備してもらう。乗り始めは部品の馴染みが出ていないので各所が緩みやすいし、ワイヤーの初期伸びが出るので調子が悪くなりやすい。ここでそのまま乗ってしまうと、調子が悪いまま定着してしまう。

●最初の100km
・100kmほど乗ってみて、それでも尻が痛くなるようならサドル交換を考える。柔らかかったり幅が広いものではなく、ロードレーサー用の定評あるサドルを奢る。ここは金をかけるべきところ。

・グリップも好みのものに替えていい。直接身体に触るパーツには凝るべき。

・それでも自転車が身体に合っていないと感じるならステム交換を考える。近め高めにすれば楽。ハンドルバーをライザー(上に曲がっているもの)にする手もある。ただし、ポジションが楽だからと言って効率よく走れるとは限らない。

・オフロードで乗る機会がなく、ハンドル幅が600mm以上あったら両端カットを考える。肩幅に合わせるのが基本。560mm~540mmぐらいがお薦め。工賃を出せば自転車屋でやってもらえる。

●最初の1000km
・最低1000km乗ったら、タイヤとチューブを軽量なものに交換することを考える。足回り(いわゆるバネ下)の軽量化は効果的だけど、乗り慣れないうちに細身のタイヤにするとパンクさせがち。

●さらにその後
・ディレーラー(変速機)、シフトレバー、ブレーキあたりは壊れたり消耗した時点で交換すれば充分。通勤や週末ツーリング程度では高級品も廉価版の部品も大して変わらない。ただし、グリップシフトは乗り慣れると明らかに枷になるので、ラピッドファイヤー系のレバーにする価値はあり。後から交換すると高くつくけど。

・乗り慣れればフロントサスペンション(特に安物)は確実に邪魔になるが、今さらリジッドフォークに替えるかは微妙なはず。まあその時点で後悔すべし。

・どうしてもホイールを替えたくなった時が、自転車ごと高級品にステップアップする時。

 

 

以上。
うちの通勤用自転車(こなもん号)もいじってやりたくなってきたなあ……

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このブログ記事について

このページは、涼元悠一が2011年5月22日 18:26に書いたブログ記事です。

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